歯周病治療

歯周病の兆候と検査

「りんごをかじると、歯ぐきから血が出ませんか?」というフレーズで印象深いCMが昭和40年代にありました。しかし、固いりんごを丸かじりすれば、誰でも血が出るわけではありません。「りんごをかじると血が出る」「歯みがきをすると血が出る」という現象は、歯周病にかかっていることを表わす、科学的な根拠のある兆候です。

歯周病の検査をおこなう際、当院ではまず、歯と歯肉のすき間にたまっている白い歯垢(プラーク)をきれいに除去して、歯肉の腫れがおさまってから、細い針のような器具を歯と歯肉のすき間にさし込みます。歯周病は、歯と歯肉の間に細菌が増えて、歯肉の腫れのために、すき間が広く深くなることから始まります。この状態が続くと歯を支えている繊維が溶かされ、もっとひどくなると骨が溶け始めます。細い器具(プローブ)を歯と歯ぐきのすき間(歯周ポケット)に差し込む検査(ポケットプロービング)で、すき間がどれくらい深くなっているか、隙間の壁の内側から出血がないかを調べます。次に、X線写真を撮影して、骨が溶けていないかどうかを調べます。

この二つの検査が歯周病の状態を知る重要な検査ですが、骨が溶けたり、すき間が深くなっているのは、過去に歯周病がひどかったことの痕跡かもしれません。現在、歯周病が進んでいるかどうかを最も正確に教えてくれるのは、歯周ポケットの内側からの出血です。ですから「りんごをかじると血が出る」というフレーズは、現代でも通用する歯周病に罹っている歯からのSOSのサインです。

歯周病の進行過程

正常な場合 歯周炎 軽度歯周病
中度歯周病 重度歯周病 歯周病末期

危険信号は?

  • 毎日の歯磨きで出血する
  • 歯肉が赤く腫れている
  • 歯肉が何となくゆるんでいる感じがしたりする
  • 口臭が続いていて気になる
  • 何となくどこか、痛い・かゆい・不快だと感じる
  • 歯がぐらつく
  • 歯が伸びてきた
  • 歯の位置が移動してきた

こんな症状のあるかたは要注意です。

歯周病は治療しても元には戻らない

歯ぐきの病気である歯周病は、歯肉が炎症を起こして腫れる歯肉炎と、歯肉の下の歯を支える組織まで破壊されている歯周病との二つに分かれます。歯を支える主な組織は、歯を取り囲む骨(歯槽骨)と、その骨と歯をハンモックのようにつなぐ線維組織から成り立っていますが、歯肉の炎症とちがって、この歯を支える組織は、いったん炎症を起こして破壊されると、元通りの形には戻りません。歯肉だけの炎症なら、その部分をいつもより時間をかけてていねいに、血がにじんでくる部分を注意して磨いていれば、一週間程度で血は出なくなり、歯肉の炎症も治まってきます。これで歯周病が治ったかどうかはわかりませんが、しかし初期の歯肉炎であれば、これで治ります。歯肉炎は治って元通りなりますが、歯周病は進行を止めることができるだけで、すっかり元通りに治ることはなく定期的な歯科医院でのメンテナンスが必要です。

歯周病治療はセルフケアと医院での継続的治療が必要

歯肉炎の状態を放置しておくと、歯周病になると考えられていますので、歯肉炎の症状があれば、歯周病を疑ってみることが必要です。歯肉の炎症がひどくても歯周病になっていない患者さんもいます。逆に歯肉にはほとんど炎症がなくても歯の周りの組織が破壊されている人もいます。たとえばヘビースモーカーは一般に歯肉の炎症は目立ちにくいのに歯周病が進んでいますから要注意です。外から見える歯肉の炎症は、歯の周りの組織を破壊する歯周病の程度を、必ずしも表わしていません。

歯周病は外からは見えない組織の破壊ですから、検査をしなければ、どこがどの程度悪くなっているかわかりません。歯の周りの状態を知るための重要な検査は、口のなかに小さなフィルムを入れて行うX線写真撮影と、歯と歯ぐきの間にチクチクと針をさし込んで出血や深さを測る検査です。

思春期に歯肉炎のある人は多いのですが、そのうち何%かの人は歯周病にまで進んでしまいますので、歯みがきをしていて血が混じるようでしたら、歯科医院で検査を受けてください。

歯周病治療の原則

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歯周病は慢性の細菌感染症です。それならば抗生物質や薬剤で細菌を殺し、歯周病を治療することが可能では?と考える方もいると思います。急性期には、薬剤を使用したり、あるいは組織内に入った細菌を排除するためには抗生物質も一時的には有効かもしれません。しかし、歯周病は慢性疾患ですから一時的に細菌を排除できたとしても、その状態を維持できなければ意味がありません。歯周病を長期的に薬を使用して改善することはできません。それは歯周病の原因になる細菌が、自分自身を守るバリアを持ったバイオフィルムをつくっているからです。バイオフィルムはプラークとよばれ、さまざまな微生物が集まった構造体ですので、薬剤の効果がなかなか及ばないのです。ですから歯の周辺についたプラークを絶えず除去する必要があります。

歯周病治療の原則は、病原性のあるプラークを除去して、有害な細菌が繁殖する条件を壊す必要があります。この処置をプラークコントロールといいます。

プラークを取り除くことによって毒性の強い細菌や有害な微生物の繁殖を抑えることでお口の環境を変えていくことが、歯周病治療の大原則です。